パソコンの生産革命:PC-98BTOの事始め(第1章-4)ー日本のパソコン大手で先陣を切ってBTO開始

超速でBTOスタート(1997年10月)

NECはPC/AT互換機メーカー勢に対抗するために商品戦略の大転換と生産流通戦略の大変換を決断し新シリーズ「PC-98NX」を1997年10月に投入することを決定しました。

その新シリーズの市場投入に合わせて、1997年6月に企業向けの新シリーズ「PC-98NX」はBTO方式で販売することが決まりました。

生産流通を従来の見込み生産方式からBTO方式に切り替えるまでわずか4か月しかありませんでした。緊急に「BTOプロジェクト」を立ち上げ、社内の関係部門のエクスパートを結集しました。

パソコン事業部単独ではもちろん手に負えません。パソコンのサプライチェーンの全体を俯瞰してBTO方式へ切り替えを検討し、「上流」~「中流」~「下流」のサプライチェーンがスムーズに流れる仕組みを作る必要がありました。

NEC社内のパソコンのサプライチェーンの上流に位置する資材調達・生産・配送などの生産&物流部門、中流~下流対応のシステム営業部門&大手ディラーなどの販売店対応部門、それに受注系システム担当・生産系システムなどのシステムソフト部門のキーマンが結集して「PC-98BTO」プロジェクトがスタートしました。

日本のパソコン大手で先陣を切ってBTO開始

BTO導入までわずか4か月しかありません。一気にBTOに切り替えるリスクもあり、何よりもパソコンを販売していただいている多くの販売店様の理解とBTO導入のメリットを実感して頂かないと成功しません。

1997年10月のPC-98BTOスタートは企業チャネルの新シリーズPC-98NXのデスクトップPCに限定してスタートすることとし、その初のBTO導入後の状況・成果や販売店の反応を踏まえてBTOをブラッシュアップしながら拡大していく方針としました。

スタートする初期BTO(BTOステップ1.0)は実現性を色々な視点から検討の結果、
・98NXのデスクトップPCのセレクションメニューを約300種
・納入LT(リードタイム、受注から納品まで)を10日(実働)
・企業向け全チャネルが対象で注文台数は1台から
の内容で日本のパソコン大手でNECが先陣を切って1997年10月にBTOを開始しました。

98BTOの経緯1

BTO1.0実施後の状況と課題

1997年10月から企業向けデスクトップに限定してBTOを開始しました。
しかし、超特急で構築した初めてのBTO方式(受注生産方式)で販売店様との需給問題が多発しました。

BTO1.0の需給問題
1)お客様の要求納期が満足できない。(要求納期満足率)
 要求納期満足率実績:94%(需要が多い3月は83%)

 [原因]
 ・用意した販売枠を超えてしまい回答納期がスライド
   ・所要予測が外れひっ迫モデルが発生
 ・納入リードタイム10日は長く即納要求に対応できない
 ・販売店からの所要見込、物件情報の変動
 ・受注前処理に時間が掛かり過ぎ

2)工場約束納期が守れていない。(納期順守率)
 納期順守率実績:95%(需要が多い3月は87%)

 [原因]
 ・出荷前になり部材欠品が判明
 ・特定日へ受注集中し生産が追いつかない
 ・EDPでのサポート力が弱く人間系処理に時間が掛かる

BTO1.0の成果

一方で見込み生産方式からBTO(注文生産方式)に切り替えた「BTO1.0」はデスクトップのみで1997年10月からと下期途中からの実施でしたが、成果がはっきりと数字で出てきました。

          1996年下期    1997年下期
・棚卸保有日数   49日        39日
 (在庫回転日数)(7.4回転)     (9.3回転)

・鮮度ロス費用    1       前年同期比:0.7

初期のBTO方式への切り替えによる需給問題など色々な課題が浮き上がりましたが、BTO方式の効果も実感し、BTO方式の問題を改善しつつ、さらに本格的に拡大していくこととなりました。

BTO1.5の開始、1998年5月~

BTO1.0の問題点と成果を踏まえて、BTO1.0をブラッシュアップしBTO1.5を1998年5月から開始しました。

主な改善・強化ポイントは次の通りです。
・企業向けのデスクトップPCに加えノートブックPCもBTO化
・納入LT(リードタイム)10日を5~7日に短縮
・納期順守率の向上
・変動対応力の強化(Weekly管理力、部材変動対応力の強化)
・情報力の強化(所要見込作成方法改善、システムの強化)
・販売店からの情報収集力強化、販売店へのサポート改善
・大手販売店とエンドユーザーへの直送化(部分実施)

98BTOステップ1.5

販売店ー営業ー生産の間のシームレスな情報の流れを如何に構築するかと、工場サイドは日々の受注変動に日々のBTO生産力をクイックに増減できるかに取り組みました。

(参考)
在庫回転日数とは

 

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