伝説のパソコン:98FELLOW物語(6)ー超コンカレント開発のマジック(1)
超コンカレント開発のマジック(1)
しかし、98FELLOWの場合、93年1月中旬に出荷するためには、実質の開発期間は2ヶ月しかありません。 練った計画を作る以前の問題で、如何に2ヶ月でやってしまえるか? ある意味では如何に手抜きをして設計品質を落とさずにできるか?を考え抜きました。
新製品1モデル当たり、標準の開発期間は5ヶ月で20人前後(ハード開発のみ)の技術者を掛けていましたから、 開発の総工数(開発面積)は
開発総工数=①期間5ヶ月×②技術者平均20人(ハード開発のみ)×③開発リスク係数(+αの追加工数1.2)=120人月
これを①の期間は2ヶ月で固定でやるためには、単純に
1.①は開発効率化し工数を大幅に削減する
2.②の技術リソースを「2倍以上」に増強する
3.③の開発リスク係数をリスクなしの「1」にする
にすれば良いのですが、もの事はそう単純ではありません。
それは、例えば回路図がすらすら書けるスキルの高い技術者は限られていること、何人も掛けて細かい分割設計にすると逆に分割インタフェース間の不整合など設計リスクが増えてしまい逆効果だからです。
マザーボード設計を知り尽くした技術センスの優れた技術者1人に任せる方が早く間違いがないのです。
また、絶対必要時間がありました、いわゆる「ボトルネック(つぼの首)工程」です。
当時、マザーボードのプリント基板(配線基盤)のパターン設計(回路図をボードの配線パターンに展開する設計)は約1ヶ月、プリント基板製造に約3W、PCケースのフロントマスクやケース板金の金型作りに約1.5ヶ月は必要でした。
さらに、98FELLOWではCirrus社の新グラフLSIを初めて拡張グラフオプションとして採用する「初物LSIのリスク」もありました。
加えて、NEC新潟のPC開発部では、他にもハイパー98(H98)の新機種開発や北米向けAPCの開発も進行中で、何10人も空いている技術者は当然ながらいませんでした。
コンカレント開発の上をゆくウルトラC・超高速プロジェクトをやるしかありません。
工程をすっ飛ばし/オーバーラップさせ、週サイクルをデイリーサイクルに超速で回す、会社のトップ・役員の全面支援を得て、製造・検査も資材もベンダーも技術と密結合で回すなど、疾風プロジェクト体制が動き出しました。
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