伝説のパソコン:98FELLOW物語(14)ー開発管理のノウハウ(1)
開発管理のノウハウ(1)
開発部の体制を前述のマトリックス・コンカレント体制に変更して各機能チームが同時並行的に動ける枠組みは作りました。 しかし、この枠組みが上手く機能するためには実オペレーション、開発進捗管理のやり方、つまり「仏に魂を入れる」ことが大切です。
それには製品特性や各々の組織に合った効率的な進捗管理方法を見出すことが必要です。 それが、外には見えてこない一般論として「文章化することが難しい各企業固有のノウハウ」となってきます。
98FELLOWの超速開発で採った進捗管理で有効だったのは次のようなやり方でした。
1.デイリー進捗会議(デイリーPDCA)
1日1時間の短時間に限定して各開発機能チームリーダー全員が参加し、未解決問題とその調査報告を行い、全員で方向性が正しいか、次の攻め方を即断し誰が何をやるかを指示するフェース・ツー・フェースの打ち合わせです。
新製品評価では色々な予期できない問題が次々と発生します。それを如何に早く間違いなく片付けるかが日程キープのポイントです。 また、変更・修正に伴う手配変更指示などの外部への整合された情報発信体ともなります。
①間欠障害はコンカレントに加速的に調査する
とくに厄介なのが、数日間ランニングさせておいても1~2回しか問題現象が出てこない「発生頻度の少ない間欠障害」です。
1日に1回出るか出ないかの間欠障害ですから、調査も2つ3つの案を並行して実験することと、特に間欠障害は評価台数を一気に増やして障害発生頻度を高める(評価を加速させる手法)を採るなどして、どの方向が真の原因に早くヒットするかをコンカレントにどんどんPDCAを短時間で回す必要があります。
②各チームの進捗を同期化させるための手を打つ
装置まとめチームは各開発チームの進捗の良し悪しを把握して日程の微調整や応援リソースなどの手当てをデイリーでダイナミックに行う。
また、各チームは全体の動き、他のチームの情報把握をしながら、自律的に自分のチームが次にやるべきことの判断を早くつけることができます。
③技術者まかせにしないで問題を早く「まな板」に乗せる
往々にして難しい問題の解決は担当の技術者のスキルやセンスにより左右される面が大きく、技術者が判断を間違ったり迷路に入り込んだりすると多くの時間を浪費してプロジェクト全体の日程に大きな影響を与えます。
そのためにデイリー進捗会議で、各チームが抱えている問題をオープンにして(まな板に乗せて)他人の目を入れて揉むことや、色々な実験をコンカレントにやる手を打つことが大切です。
④生産・資材部隊が早く動けるようにする
デイリー進捗会議で出た変更情報(変更がありそう情報も)をとにかく「生情報」で良いから流して、手配中止/追加や改造準備などを生産・資材部隊が早く自律的に動けるようにすることが、日程を早めることや無駄なロス費用を発生させないために重要です。
98Fellow超速プロジェクトでは、
朝9時に技術部のキーマンによる朝ミーティングを行い、
その後すぐに製造部隊(OA部、時に資材部も参加)のキーマンとのミーティングで状況伝達と
緊急な依頼を行い、さらに夜9時から夜ミーティングで次の日の動きを方向付けるなど、
1日3回のPDCAを回して、技術・製造・資材が最新情報を共有し自律的に早く動ける工夫をしたことが効果が大きかったと思います。
ミーティングに時間を掛けては貴重な評価や調査や実アクションの時間が取られてしまいます。
ミーティングは最低人数のキーマンで最短時間で済ませるのがポイントです。
昨今は開発進捗管理もメンバー間で電子メールのやりとりだけで済ませている場合も多いようですが、私は「失敗しやすい進捗管理」だと思います。
というのは、「開発の問題解決とは1つの調査結果から次の調査方向を決めて短時間で次から次へと回して原因と対策を確定するプロセス」だからです。
そのような本質から見て、電子メールのみでは情報の欠如・誤認識があったり、投げっ放しで状況を細かく聞けない、キャッチボールに時間が掛かる、メールの文言の裏側の事情を読み取れない、判断パラメータが一方的で誤った決断をする恐れがあるーーーなどの面で適していないからです。
特に海外の開発委託先や関係会社などとは時差や英語でのインタフェースとなることから、電子メール(グループウエア含めて)が中心となりがちですが、上記のことから電子メール・オンリーに依存するのは危険な方法です。
開発とは開発者の人間的要素や組織的なマネジメント力の良し悪しで大きく左右されるからです。 従って、フェース・ツー・フェースの打ち合わせ、電子メール、電話/TV会議をうまく組み合わせて活用すべきです。
上記は進捗管理のノウハウですが、「開発マネジメント力」とは、その組織が経験や組織特性から作り上げていった、個々のノウハウの集合体がその実体であると考えられます。
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